運命の巡りあわせ
無事卒業検定合格しました。
延泊になったことで色々経験が出来ました。なんというかそんな一言で片付けたくないレベルに貴重な体験でした。
ここまで
免許合宿の卒業検定でまさかの不合格。なってしまったものは仕方ない。できることをやろう。
落ちた次の日、10時の補講を終えてそのまま石巻駅へ向かうことにした。建築を学ぶものとして生で見たかった。そんな思いで被災地をちゃんと見に行くことに決めた。
送迎のおじいちゃんに石巻駅に行きたいことを伝える。するとおじいちゃんは「そうか、じゃあ時間もあるし日和山に連れて行ってやる」という。感謝しかなかった。失敗で心が少し荒んだ僕に一滴の希望の雫が垂れて、自分自身蘇るのを感じた。
日和山へ到着する。するとおじいちゃんはこんにゃくおでんを買ってきてくれてお茶までくれた。そして10円玉を僕に渡して「お参りしてきな」という。ありがたかった。
そして日和山の頂上からの景色を見る。
下のほうに目をやると、ボードにはかつての日和山からの景色があった。
全然違う
その時、本当の意味で僕はここが震災が起きた場所だと理解した。それまで新築しかなかったり、不思議な虚無感を2週間で感じていたが、それをやっと理解した。元にあった建物は消え、自然も消え、工事中の現場が痛ましく目に入る。流石に9年経っているのもあり、まっさらではない。でもまっさらになってしまったというのが僕でも分かった。
そしておじいちゃんが色々話してくれた。彼はアルバイトで教習生の送迎をやっていて、合宿生がいる春夏しかやらないそうだ。そして休みの日曜日は自分の車で教習生を色々な観光地に連れて行ったりしているらしい。
なぜそこまでするのか?
彼は一度津波に飲み込まれたらしいのだ。第一波だったため、瓦礫で怪我することなく生き延びたらしいが、彼はそれを「生き延びた」ではなく「生かしてくれた」と言っていた。そして生かされた自分が出来るのは休日に若い人達に石巻を観光してもらうこと。
僕は目頭が熱くなり、心を揺さぶられた。
延泊して本当によかった。
これは神様がくれた経験なのだと。
あの時、不運にも今まで遭遇したことのない交差点で過ちを犯したのは何かの巡りあわせだった。僕が建築家として生きていくかもしれない道として必然的事柄であった。
その後、女川へ行き色々な建物や景色を見てきた。
建築の弱さ。
そして人の強さそ感じた。
僕には何ができるのだろう
そんなことを強く考えさせられた。
これから一生向き合っていこうと思う。